ダウン症について医療者の教育を:英米ダウン症協会の要求

出生前診断を受けることは、個人の自由であり、
その結果を受けて、どんな選択をするかも、個人の自由である。

このことを否定することはできない。

しかし、出生前診断の結果も含めて、選択の基盤となる情報は妥当なのか?
という疑問が、特にダウン症親達の間にはある。

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この根底には、子ども達に関する医療現場での評価と、
実際の子ども達の成長との間に感じる差異があると思われる。

かつて医療現場は、ダウン症の子ども達を社会的に差別する現場でもあった。
そのことを、英国ダウン症協会が"He'll never join the army"(1999) というレポートにまとめている。

(He'll never join the army = 「彼は兵役にはつかないね。」これは実際に親の経験した医師のことばからとっている。その他にも「めがねは必要ないよね」など、親が傷付いた言葉の数々がまとめられている。)

そして時に今でも、医療現場は、そうした場となっている。
こうした状況の中で、新しい出生前診断は、医療現場で提供されようとしている。

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このことについて、米国ダウン症協会は、

・出生前診断の現場で、25%の医師が、妊婦に対するダウン症について説明する際に、ネガティブな情報を強調したり、妊娠を中断することを求めたりしていること、
・出生前にダウン症という診断を受けた妊婦が、医師から、ダウン症に関して不正確、不十分、時に悪意ある説明を受けていること、
・さらに81%の医学生が、教育課程で知的障害を持つ人々についての医学的トレーニングを受けておらず、
・45%の産科医が、出生前診断をどのように提供すべきかに関する適切なトレーニングをほとんど、または全く受けていないと答えていること

という調査結果に基づき、
「安全」「正確」「迅速」とされる、新しい母体血診断法が世に出る前に、医学教育の課程において、ダウン症の出生前診断を家族にどのように伝えるのかについて教育することを求めている。
そのために、協力もしますとも、伝えている。

NDSS Position Paper

英国ダウン症協会も、産科医療の専門家等に向けた教育プログラムを開発している。

Tell It Right, Start It Right.

これは、協会が受けた出生前診断を受けた妊婦や家族からの相談の相談を通して、
医療従事者から適切な情報を得られていないということが明らかになったことではじまったプログラムである。

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出生前診断における「自由な」選択を可能にする、「十分な」情報とは、必ずしも医療者からの情報とは限らない。

むしろ医療者からの情報だけでは、少なくとも今のところ、不十分な場合も多い。

このことは、医療現場において「選択」を行なう妊婦とその家族に、まず必要な情報なのではないだろうか。
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by m_mw | 2012-07-06 15:59 | 考えていること・thoughts