ダウン症の出生数の推移に関するデータ

出生前診断の登場以降、その対象としては最も発生頻度の高い「ダウン症」の出生数の推移が、世界で調査されてきました。

昨日お伝えしたSkotko氏の論文は、それらをまとめたものです。
Skotko氏は、世界各地で出生前診断の登場によって、ダウン症の出生数は「抑制」されてきていると指摘しています。

この指摘について、各地の調査を確認してみました。

【イギリス】
Morris, J. and Alberman E. "Trends in Down’s syndrome live births and antenatal diagnoses in England and Wales from 1989 to 2008: analysis of data from the National Down Syndrome Cytogenetic Register."BMJ.339(2009)

データソース:National Down's syndrome Cytogenetic Register

結果:出生前と出生後を合わせたダウン症児の診断数は、1989年から2008年までで71%上昇している。しかし出生数の上昇は1%にとどまっている。診断数が増加している背景には高齢妊娠が増加していることが考えられる。診断数と出生数の差は、出生前診断の普及によるものと考えられる。

【オランダ】
de Graaf, G. et al. "Changes in yearly birth prevalence rates of children with Down syndrome in the period 1986–2007 in the Netherlands." J. Intellect Disabil. Res. 55(5): 462-73 (2011)

データソース:National Cytogenetic Network.

結果:出生数は、1990年代初頭には10000に11だったが、現在では10000に14に上昇している。出生前診断が普及しているにもかかわらず出生数が上がっていることの背景としては、高齢妊娠の増加が考えられる。

【デンマーク】
(1)Laresen, SO. Hansen, J. and Pedersen, BN. "Expected, prenatally discovered, and born cases of Down syndrome in Denmark during the period 1980-1998."Prenatal Diagnosis. 21(8): 630-3. (2001)

データソース:未確認
結果:全妊婦の11.8%が羊水検査を受けているにも関わらず、ダウン症出生の38%しか予防できていない。スクリーニング検査を受けないことが、年間300件のダウン症出生数に影響している。

(2)Ekelund, CK. et al. "Impact of a new national screening policy for Down’s syndrome in Denmark: population based cohort study. "BMJ337:a2547(2008)

データソース:19の産婦人科とCentral Cytogenetic Registry 2000-7.
結果:ダウン症の出生数は、2000年から2004年までは55から65件だったが、2005年には31件に減り、2006年には32件だった。スクリーニングによる検出率(detection rate)は2005年は86%、2006年には95%だった。

(* 1998年から2000年までの間にも大幅に出生数が減っているように見えるが、これは事実だろうか?それともデータの違いが影響しているのだろうか?要確認。)

【米国】
Natoli, J.M. et al. Expected, prenatally discovered, and born cases of Down syndrome in Denmark during the period 1980-1998. Prenatal Diagnosis. 32(2): 142-153(2012)

データソース:PubMed, Cochrane, EMBASE(科学論文サーチエンジン)で検索された、1995年から2011年までに発表された英語論文。
検索語にひっかかった6570本の論文から、ダウン症診断後の中絶率に言及しているものは24件。

結果:考察した論文における中絶率は、人口ベースの調査では、61%から93%。病院ベースの調査では、60-90%で、従来言われてきた92%よりも低い。また中絶率が低下していることも確認された。論文では、低年齢の妊婦の中絶率も低いことが確認されている。この理由としては、福祉が充実したことで妊娠を継続しやすくなったことと、羊水検査の安全性が高まったことで、これまで検査を受けなかった中絶を考えない人も検査を受けるようになっていることが考えられる。また、年齢やエスニシティーによる中絶率の違いも確認されており、ひとつの調査だけでアメリカ全体でのダウン症を理由とする中絶率を検討することはできないということも、確認された。

(メタ分析であり、私には難解だった。データからどのように、中絶率の低下を指摘できるのか、再度読まないとわからない。ただし、国際的な調査でも、欧州に比べて米国は、ダウン症を理由とする中絶が少ないと言う結果が出ているらしい。興味深い。)

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アメリカの最新データは、Skotko氏と同じくその他の論文のmeta分析であることもあって、十分な理解ができませんでしたが、Skotko氏と同様の指摘をしているのは、イギリスとオランダのケースと言えそうです。デンマークのケースは、特に、2001年と2008年を比べると、にわかには信じ難いほどのダウン症出生数の減少を示しています。

いずれにしても、国によって、出生前診断後の選択の傾向に違いがあるということは、明らかなようです。
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by m_mw | 2012-07-05 11:39 | 考えていること・thoughts