一瞬の風になれ (佐藤多佳子)

オリンピックが近い。
ということはパラリンピックも近い。
今年は、この二つの「リンピック」の間を横断する選手が登場するかもしれない。
その名は、オスカー・ピストリウス。
義足のランナーである。
健常者をしのぐその走りから「サイボーグ」の異名を持つ彼は、400mでは惜しくも大会出場タイムを出すことができなかったが、1600mリレーに選ばれる可能性が残されているらしい。
既に2011年には世界陸上への出場を果たしているが、スポーツの祭典にも革新をもたらすか、注目を集めるところだ。

それにしても、何故人はこうも走ることに熱中するのだろうか。
人にとって走るとは何なのだろうか。
理由はわからないけれども、胸打つ何かがあるのだろうと思わずにはいられない小説に、佐藤多佳子の『一瞬の風になれ』(2007)がある。
その後に続く、「走る小説」の先駆けとも言える、青春小説である。

主人公は高校生の男子二人。
走りの天才と、サッカー選手への夢に破れた努力家。
二人を中心に、走ることに青春の全てをかける陸上部員達の成長が描かれる。
舞台となる相模原の牧歌的風情が、彼等の切磋琢磨を清々しく見せていたように記憶している。

持って生まれた才能を見せつけられながら、自分の限界に挑戦することをあきらめないこと。
そんな青いテーマが、男子特有のユーモアに包まれた物語に仕上げられている。

読んだ当時、相模原に住んでいたので、とにかくはまりました。
で、『一瞬の風になれ』中毒にかかっていたある日、電車で聞いたんです。
「まじ、いいよね。『一瞬の風になれ』。次の巻早く買いたい。」
って、中学生の女の子が言うのを。

確かに、文体はヤングアダルトすれすれよね、と、大人きどりだった私は、ちょっぴりショックをうけてしまった。
でも、いいのです。良いものは良いのだから。
しかも、私大人だから3巻大人買いだぜ、なんて、心の中で威張ってみたり。
(大人??)

佐藤多佳子は、青春を描くのがうまい。
多分、人の矛盾や限界に出会ったばかりの柔らかい心の葛藤を、捉え続けているからだろう。
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時々、そんな世界に触れたくなると、彼女の作品を紐解いてみる。
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by m_mw | 2012-07-03 01:18 | 読書録・reading memo